仕事唄となる「姉こもさ」の歴史
秋田民謡には「姉こもさ」と呼ばれる、恋心を唄ったとも思えるような民謡があります。この唄は元来、鉱山で働く職人が足踏みしながら炉に風を送って精錬する際、そのリズムに合わせて唄われる仕事唄の一つとして広まりました。また、職人らが唄うことから、時には銭吹唄とも言われてきました。「姉こもさ、ヤーエー」と抑揚をつけて声高らかに叫ぶ唄には、職人の思いが込められていたのです。
「姉こもさ」の意味
たたら製鉄における踏み鞴による送風作業「姉こもさ」という題名の意味は不透明であり、その後に続く囃子詞、「ヤーエー」という掛け声も、日本語とは思えない不可解な言葉の響きです。一説によると「姉こもさ」は「姉こ」と「もさ」の2つの言葉に分けられ、「姉こ」はその名のとおり「お姉さん」、「もさ」は「もしもし」という呼びかけと考えられています。よって「姉こもさ」は、「お姉さんに申す」という意味に解釈できます。しかしながら、仕事唄として汗水流して働いている職人が、「もしもし、お姉さん」と掛け声をあげて唄うというのは、いささか不自然です。
「姉こもさ」の歌詞を解釈する鍵は、おそらく、その後に続く「ヤーエー」という掛け声にありそうです。この言葉は、ヘブライ語で創造主の神を意味するיהוה(yhwh、ヤーエー) が語源となっている可能性があります。すると、「姉こもさ」も、ヘブライ語で理解することができるかもしれません。その前提で「姉こもさ」を読み直すと、意外にも、「ヤーエー」神に関連する掛け声として一連の囃子詞の意味が、ヘブライ語で浮かび上がってくるのです。
ヘブライ語で読む「姉こもさ」
「姉こもさ」の「アネ」という言葉は、ヘブライ語で「私」を意味するאני(ani、アニ) と理解できます。「コモ」は「立ち上がる」を意味するקומ(kum、クム) です。この言葉の発音は「コモ」とも聞こえます。よって、この2つの言葉を繋げると「アニ・コモ」「姉コモ」となり、「私は立ち上がる」という意味になります。
その語尾にはヘブライ語で、「前に進め」「行く!」という意味を持つסע(sa、サ) 「サ」、が付け加えられて、「アニ・コモ・サ」になったと考えられます。「姉こもさ」の意味が明確になってきました。それはヘブライ語で、「我、立ち上がって行く!」、「私は立ち上がって進む!」という意味だったのです。これはまさに、炭鉱で働く人達が、風を送るために足を止めずに足踏みする際に唄い続けるような歌詞であったと考えられます。
姉こもさ
姉こもさ ヤーエー ほこらばほこれ 若いうち
桜花 ヤーエー 咲いての後に 誰折らば折りたくば ヤーエー 訪ねて御座れ 沢雨に
別れるに ヤーエー 糸より細く 別れます恋しさに ヤーエー 空飛ぶ鳥に文をやる
この文を ヤーエー 落としてたもな頼み置く一代の ヤーエー 風切り羽根を落とすとも
お前より ヤーエー 預かり文は 忘れまい