「日本とユダヤのハーモニー」の始まり
1980年台、米国ロスアンジェルスで不動産事業を営んでいた際に、大勢のユダヤ系実業家の方々と出会う機会がありました。中でもベトナム戦争時はヘリコプターの技術士として現地で活躍し、米国に帰国後、不動産のデベロッパーとして成功したゼブ氏とは親しくさせていただき、時折夕食を共にしたり、一緒に旅をしたりしながらよく雑談をしたものです。
伊勢神宮の表玄関となる宇治橋そのゼブ氏がある日、「日本人のルーツはユダヤであるという噂があることを知っているか?ヨセフ・アイデルバーグという学者が『大和民族はユダヤ人だった』という本を書いたのだが読んでみたら?」と教えてくださったのです。日本とユダヤに民族的な接点があるならば大変興味深いことだと思い、その時から古代史のリサーチが始まりました。そして歴史の街道をひたすら遡っているうちに、日本とユダヤの共通点が幾つも見えてきたのです。その結果、誕生したのが「日本とユダヤのハーモニー」というエッセイ集です。そのなかでも、最初に手掛けたのが伊勢神宮のルーツに関する話題であり、そこから日本とユダヤの接点を見出すロマンが始まりました。
伊勢神宮の石灯篭にはユダヤの紋章?
石灯篭に刻まれた「ダビデの星」果たして日本人には神の選民とも言われているユダヤの血が流れているのでしょうか。そして日本を代表する崇高な伊勢神宮にもユダヤルーツが潜んでいるのでしょうか。そんな疑問を抱きながら、1988年、伊勢神宮に参詣しました。以前から伊勢神宮には三種の神器が奉納されているということや、天皇家とユダヤの関係に携わるさまざまな言い伝えが盛りだくさんあると聞いていたことから、自らが足を運び、伊勢神宮の姿を自分の目で確かめてみたかったのです。
まず、JR伊勢駅から外宮、そして内宮に繋がる街道の両脇に立てられた石灯篭の数の多さに度肝を抜かれました。それら石灯篭の上部には皇室を象徴する菊の紋章が刻まれているだけでなく、あかり窓の下にはユダヤの紋章と同じ「ダビデの星」が鮮やかに彫られていたのです。何故、天皇家も参拝する、神道の総本山とも言える伊勢神宮の参道沿いに、ユダヤの紋章とも思われる印が彫られているのでしょうか。
この石灯篭は、神宮庁長官であった故二荒氏と、奉讃会会長の故森岡氏が協議した結果、詳細の指定ができあがったと言われています。その後、兵庫の木藤石材工業がその製作にあたり、神宮奉讃会により寄贈されました。何故、発起人となった2人が、石灯篭の台座にユダヤの紋章と同形の彫りを入れることを望んだかは今もってわかっていません。工事を請け負った木藤氏は、ただ指定されるままに製作したと言われています。
伊雑宮は「イザヤの宮」か?
伊雑宮伊勢神宮の石灯篭に彫られている紋章は、伊勢神宮の別宮、志摩国一宮である伊雑宮の正式な紋章にもなっています。「伊勢」と「伊雑」の宮が、ユダヤの紋章と同じデザインの紋章を共有していることは、果たして偶然でしょうか。
伊雑は「イザワ」と読みます。その言葉の響は、ヘブライ語で「神の救い」を意味する「イザヤ」を彷彿させます。聖書に登場する預言者の中でもイザヤは有名です。「イザヤ」という名前は、英語表記ではIsaiah, ヘブライ語では יְשַׁעְיָהוּ (Yeshayahu、イェシャヤフ)と書き、「神は救い」とう意味の言葉です。それがイザヤの名前として、そのまま使われているのです。その「イザヤ」という発音が多少訛って、「イザワ」になったとは考えられます。
もし、伊勢神宮の別宮である伊雑宮の名称が元来ヘブライ語で綴られ、「神の救い」を意味する「イザヤ」、もしくは「イザワ」として定められたとするならば、伊雑宮と伊勢神宮は同一の紋章を共有しているだけに、「伊勢」という名称もヘブライ語で理解することができるはずです。また、「イセ」という言葉にも、神の救いに関するメッセージがヘブライ語で込められていると考えられます。
「伊勢」の語源はヘブライ語?
そこで「伊勢」という名称にも注目してみました。「伊勢」は、伊勢えび、伊勢神宮など、一般庶民にとっても馴染みの深い固有名詞であることから、誰しも地名を指す名称という印象を持っているはずです。この「イセ」という言葉は、実は宗教色の大変強い言葉として、海外でも遠い昔から使われてきている言葉だったのです。
「イセ」は、英語のアルファベットで「ISE」と綴り、この「IS」に注目です。何故なら、「IS」に繋がる言葉の中には、「イセ」「イシュ」「イサ」という信仰に結び付く言葉が存在するからです。これらの言葉は、ヘブライ語で「助け」「救い」を意味する「イェシュア」「イシャ」という言葉が語源にあります。ヘブライ語で「救い」は יֵשׁוּעַ (Yēšúa、イェシュア)と書きます。この「イェシュア」から派生する言葉が「救い」の意味を持つことから重要になります。
イエスキリストの「イエス」という名前も、「イェシュア」に由来しています。それはイザヤと同様に、神の救いを意味する名前です。イエスキリストの「イエス」という名前は、古代ギリシャ語では「イエースー」と呼ばれ、古くから「イサ」とも呼ばれることもありました。特にイスラム教圏の国々では、「イサ」はイエスキリストのことを指すと考えられてきました。何故なら聖典コーランの中では、救い主であるイエスキリストを、アラビア語で「イーサー」「イサ」と呼んでいるからです。その結果、今日でも世界各地で救い主は「イサ」と呼ばれています。
伊勢神宮の「イセ」という名称は、もしかするとヘブライ語に語源があり、「神の救い」という意味が込められている可能性があります。「イサ」と「イセ」はほぼ、同等の発音です。そして「イサ」が救い主を意味することから、その言葉は正に、伊勢神宮の名称の語源となる言葉としてふさわしいものではないでしょうか。国家の安泰と人々の救いを願う生粋の神社であるからこそ、イサ神宮、イセ神宮と命名されたと考えられます。
伊勢神宮のルーツはユダヤ?
伊勢神宮の名称そのものが、イスラエルの言語であるヘブライ語で救いを意味する「イェシュア」に由来すると仮定するならば、石灯篭にイスラエル国家の紋章であるダビデの星が彫られた理由も見えてきます。伊勢神宮のルーツはユダヤにあるからこそ、その別宮の伊雑宮でもダビデの星が彫られた石灯篭が建てられたと想定されます。それ故、伊勢神宮と伊雑宮の名称は、どちらもヘブライ語で神の救いを意味する言葉を語源とし考えられたのではないでしょうか。
「日本とユダヤのハーモニー」とは、このように日本とユダヤの関係から浮かび上がってくる古代史の流れと言葉の語源を検証し、それらの接点を見出しながら、歴史の真相に迫るロマンなのです。