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2021/05/04

能登民謡「麦や節」の意味 ヘブライ語で叫ばれた励ましの掛け声とは

「能登麦や節」の背景

石川県を中心に北陸地方で唄われている民謡の中に、「能登麦や節」があります。この民謡は「麦や節」の原曲となった名曲であり、石川県の無形文化財にも指定される程、素朴で落ち着いた響きを持つ民謡として有名です。面白いことに、その歌詞のルーツは能登半島で作られるそうめんにあると言われています。そうめんは小麦を原料として作られていることから、そうめん屋は以前、「麦屋」とも呼ばれていました。そうめん作りは小麦を石臼で挽く作業にはじまり、夜通し入念に伸ばした麺を朝方には干すという、想像以上に大変な仕事で、麺職人は徹夜を覚悟で作業をしたそうです。そんなつらい仕事の中で、お互いを励まし、活気づけるために唄われたのが、この「能登麦や節」です。

「麦や節」の歌詞と囃子詞

夜通し働く職人の元気と明るい声が「麦や節」の真骨頂であり、その力が歌詞にみなぎっています。

能登の七浦(しつら)でエエナ 竹切るイナー(チョイト)
音はイナー三里聞こえてイナー(チョイト)
五里サーイナー響くイヤー(アラチョイト五里響くヤイナー)
三里聞こえてイナー(チョイト)五里サーイナー響くヤー

麦や小麦は 二年ではらむ 米やお六は 年 ばらみ
(アラチョイト年ばらみヤーイナ)米はお六は 年ばらみ

輪島麦屋は 七軒(ななやけ) 八軒(ややけ)
中の麦屋で 市が立つ

石川県無形民俗文化財 能登麦屋節(輪島市門前町地区)

「麦や節」では、一声の囃子詞が連続して唄われます。特に「五里響くヤイナー」「年ばらみヤーイナ」にみられる「ヤーイナ」「ヤイナー」と、「麦や小麦はイナー」「刈るがヤーイナ」と唄われる「イナ」の返し唄は、能登民謡の特徴でもあり、独特の響きを持っています。

一見、日本語では意味が不透明なこれらの囃子詞も、単なる大きな掛け声のための文字綴ではなく、それらひとつひとつの言葉に大切な意味が込められていたことがわかってきました。

「ヤーイナー」の意味をヘブライ語で解明

日本語では意味が不可解な「能登麦や節」の囃子詞はヘブライ語で読むと、言葉の意味を理解することができます。まず、「ヤーイナ」「ヤイナー」の「イナー」に注目してみました。

ヘブライ語では「喜ぶ」「楽しむ」を意味するיהנה(yana、ヤナー) という言葉があります。そのアルファベットの並びから、「イナー」と読むこともできます。その「ヤナー」「イナー」の接頭語として、「神」を意味する「ヤ」、または「ヤー」を付け加えて、「ヤーイナー」とすれば、「神が喜ばれる」「神が楽しまれる」、という意味になります。「イナー、ヤイナー」とは、ヘブライ語で、「喜べ、神が楽しまれる!」という、神を称えるお祭りの言葉だったのです。神が楽しまれるために褒め唄い楽器を奏でることが、「神楽」のルーツともなります。

「能登麦や節」は、神が大自然を育み、「麦や小麦」などの穀物が豊かに収穫される年となることを願いながら唄われました。みんなが元気いっぱいに神を祭る時、「喜べ!」「イナー」という囃子詞が叫ばれ、民衆は神と共に楽しみ唄ったのです。そしてお祭りの主人公は神であることから、「ヤ」の神に対して、「ヤーイナー」とも叫んだのです。この歌声には「神様が喜ばれる!」という思いが込められていました。どんなつらい時でも、神が助けてくださり、豊かな収穫を与えてくださる、という喜びにあふれた信仰の思いが、「能登麦や節」の囃子詞に込められていたのです。

「チョイト!」の意味は「前進しよう!」

続いて唄の勢いにのり、「チョイト!」と叫びつつ唄うことにより、みんなで一緒に「前進しよう!」と、互いに励ましあいながら、喜び踊ったのです。「イナー」「ヤーイナー」に続く「チョイト」の囃子詞も、同様にヘブライ語で解釈できます。

「チョイト」の語源はおそらく、ヘブライ語のצועד(tso‛ed、ツォエド、チョイド) ではないかと考えられます。この言葉は「行進」、「前進」、「前に進む」ことを意味します。そしてヘブライ語で「前に進め!」、「ツォエド!」「チョイド!」と歌っているうちに多少訛り、「チョイト」になったのでしょう。

囃子詞のパンドラが開けられる!

こうして夜通し麦をこねる大変な作業を、「ヤーイナ」「チョイト!」と、お互いが声を掛け合いながら、人々は働き続けたのです。「チョイト」の掛け声に、多くの人は前向きに進み続ける勇気を得たのではないでしょうか。そして「ヤーイナ」の掛け声にも元気づけられながら、神と共に喜び唄う麦や節は、徐々に庶民の間に浸透し、囃子詞が親しまれていくことになります。そしてみんなで「前進しよう!」と励まし合いながら、いつしか唄のメロディーがうまれ、麦や節はその囃子詞とともに、代々にわたり伝承されたのです。

「能登麦や節」で唄う囃子詞の背景には、元来、「神が喜ばれる!」、「楽しまれる!」という神への祝福の思いが込められていました。ところがその言葉の意味は、長い歴史の中に埋もれてしまい、これまで囃子詞が何を意味するのか分からないまま、大勢の人はただ、歌詞だけを口ずさんで歌ってきたことでしょう。その囃子詞のパンドラが開けられ、ヘブライ語で解読することにより、本来の意味がみえてきたのです。

「ジャントコーイ」のテーマと意味

「能登麦や節」を原型として、後日、その後継とも言える「麦や節」が広まり、その名声は原曲を超えることになります。ごく一般的に「麦や節」のテーマは、さっさと刈り取られてしまう短命の麦を、自分達の哀れな姿に例えて唄ったものと解釈されています。しかしながら、ヘブライ語での意味は全く異なります。

「麦や節」の囃子詞の中には「能登麦や節」と同様に、「ヤーイナー」の囃子詞が含まれています。そこには「神が喜ばれる!」、「神が楽しまれる!」を意味する「ヤーイナ」に加えて、「ジャントコーイ」という掛け声もかかります。この囃子詞もの意味もヘブライ語で理解することができます。

「ジャントコーイ」に含まれる「ジャント」は、「能登麦や節」の囃子詞である「チョイト」に結びつき、それと同様の意味をもっています。「チョイト」の意味は、ヘブライ語で「前進する」です。その語源となる「チョイト」「ツォエド」というヘブライ語には過去形が存在し、צעד(tsaad、チャアド) となります。すると「チャアド」は「チョイト」の過去形として、「行進した」、「前進した」を意味します。この「チャアド」が訛って「ジャント」になったと推測されます。

では、「ジャント」に続く「コーイ」の意味は何でしょうか。ヘブライ語には、「生きていること」を意味するחי(khay、ハーイ、カーイ) という言葉があります。「コーイ」の発音に限りなく近いことから、そのルート語である可能性が考えられます。これら2つの言葉が組み合わさると、「チャアド・カーイ」となり、「生きて前進した!」、「活き活きと行進した!」という意味になります。そしていつの間にか「チャアド・カーイ」が訛り、「チャアド」が「ジャント」となり、「カーイ」は「コーイ」と歌われ、「ジャントコーイ」という囃子詞に落ち着いたと考えられます。

「ジャントコーイ」の囃子詞には、「前に進んで生きる!という意味が、ヘブライ語で込められていたようです。だからこそ、どんな時でも「麦や節」を歌うことにより、人々は勇気づけられ、励まされたのではないでしょうか。「麦や節」も、古来の「能登麦や節」と同様に、元気を出して歩み続けるための励ましの唄だったのです。そこにはオリジナルの「能登麦や節」と同様に、神のご加護を得て、「元気はつらつ」に人々が働き続ける願いが込められていたことがわかります。

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中島尚彦

中島 尚彦

南カリフォルニア大学、ペンシルベニア大学ウォートン校、フラー神学大学院卒。音楽系ネット通販会社サウンドハウスの創業者。古代史と日本古来の歌、日ユ同祖論の研究に取り組むとともに、全国の霊峰を登山し、古代遺跡や磐座の調査に本腰を入れている。

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