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2022/07/14

祇園祭のゆかりとテーマ 「人と海との和」から浮かび上がる古代の真相

祇園祭の起源

日本三大祭のひとつであり、夏の風物詩である祇園祭は、古くは祇園御霊会とも呼ばれ、そのルーツは平安時代に恐れられた怨霊や疫病の厄払いに遡ります。当時、疫病が大流行したことから、人々は怨霊を鎮めて国難を逃れるために祇園精舎の守護神である牛頭天王を祀り、神々に祈りつつ町中を練り歩いたと言われています。牛頭天王はその後、疫病を司る神として京都の八坂神社の地に祇園社として祀られました。

八坂神社 舞殿
八坂神社 舞殿

牛頭天王の名は、蘇民将来説話に登場する疫神である武塔天神としても知られています。そして説話の中では武塔天神が自らをスサノオと称していることから、いつしか牛頭天王と武塔天神は同一視されるだけでなく、そこにスサノオも併せて崇められるようになったのです。よって八坂神社では、その主祭神である素戔嗚尊(スサノオ)を牛頭天王として祀り、祇園信仰の基としています。

こうして祇園祭ではスサノオなる牛頭天王を祀りつつ発展し、神輿渡御、山鉾や花笠、田楽などに代表される一連の儀式が執り行われるようになりました。そして例年7月には町をあげて、祇園祭を祝うようになったのです。

海にまつわる祇園祭のゆかり

祇園祭 船鉾 山鉾巡行
祇園祭 船鉾 山鉾巡行

全国の祇園祭は、海にまつわる由緒と絡んでいることが多いことで知られています。祇園祭のさまざまな神事の中で祀られる牛頭天王、素戔嗚尊(スサノオ)は、海の統治を任された海神の祖です。そして水を支配する八岐の大蛇を退治したことから、水を司る神としても崇められています。日本書紀古事記から知ることのできるスサノオの姿は、勇ましい海上の雄なのです。

そのようなスサノオの背景を踏まえ、各地の祇園祭ではスサノオなる牛頭天王だけでなく、海上を漂いながら人々を導く象徴となる水神を祭っている事例も散見されます。祇園祭に関連する祭事では、山車の代わりに船を出す御船祭だけでなく、さらには神輿を川や海まで引き込む神輿水中渡御の祭も、全国各地で行われています。それは祇園祭が「人と海との和」を大切にしている証であると同時に、神輿と船、そして海に関わる何かしら重大な出来事が古代、存在したことの名残ではないかとも考えられます。

祇園祭のテーマは「人と海との和」

祇園祭 船鉾
祇園祭 船鉾
「人と海との和」のテーマが古くから重要視された理由は、日本の国生みに携わった神々の多くが、古代、アジア大陸から渡来したと想定することで見えてきます。建国に携わった人々は大陸より船に乗って日本列島に渡来したことから、その中には海洋豪族の祖となる海人も多く存在したことでしょう。海とともに生きてきた古代の渡来者にとって、「人と海との和」が大切に考えられたことは言うまでもありません。

新天地となる日本列島に到達した初代の渡来者は、島々の地勢を把握した後、大勢の民を列島に導引することになります。よって、神の御加護の元、船で海を渡り、新天地へと向かう人々の願いは航海の安全であり、その古代渡来者の思いが、「人と海との和」という祇園祭が掲げるテーマに繋がっています。それ故、祇園祭の神事においては前祭の「船鉾」や、後祭の「大船鉾」など、船に纏わる行事が多く含まれているだけでなく、御祭神として海神であるスサノオが祀られています。そして祇園祭を彩る装飾品の随所には、海のモチーフを掲げたデザインがふんだんに盛り込まれることになります。

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