桃太郎で唄う「えんやらや」
全国各地の祭りで用いられている囃子詞の中でも、祇園祭などで唄われる「えんやらや」は、誰もが一度は耳にしたことがある掛け声です。それもそのはずです。「えんやらや」という言葉は、童謡「桃太郎」の歌詞、「桃太郎さん、桃太郎さん…」の中にも含まれているのです。よって誰もが幼い頃、口ずさんだことがあるのではないでしょうか。その歌詞の中に、「ぶんどりものを えんやらや」、「勇んで車をえんやらや」と2回、「えんやらや」という言葉が登場します。
「えんやらや」の意味
「えんやらや」という言葉は、重たいものを動かしたり、力を込めて何か作業したりする際に、自然と口ずさんでしまうほど、日常生活の中でも耳にすることがあります。それ故「えんやらや」は、ごく一般的に「えいやー」という掛け声と同義語のように捉えられています。すなわち、力を合わせて物事を行う時の掛け声に由来していると考えられているのです。
また、各地の祭りで唄われている囃子詞の中にも「エンヤ」という言葉が含まれています。それ故、「えんやらや」の語源も、そのルーツを辿ると、「えんや」にあるのではないかとも言われています。「大漁唄い込み」の「エンヤードット」や、「北海盆唄」の「エンヤーコラヤ」など、「エンヤ」を共通の語源とする囃子詞が全国各地の祭りで唄われていることは注目に値します。
ヘブライ語で解釈する「えんやらや」
「えんやらや」の語源は、実はヘブライ語ではないかという説があります。「えんやらや」に限らず、多くの囃子詞がヘブライ語で理解できることから、「えんやらや」も同様に、その語源がヘブライ語である可能性があります。
ヘブライ語の「アニ・アーレル・ヤー」という言葉の発音が、「えんやらや」に似ていることから、それを語源とする説を振り返ってみます。まず、「えんやらや」の「えん」は、ヘブライ語で「私」を意味するאני(ani、アニ) 、「アニ」が訛った言葉とします。次に、「やらや」の語源を、ヘブライ語の「アレル・ヤー」と解釈します。ヘブライ語では、「讃える」ことを意味するהלל(halel、ハレル) の語尾に「神」の「ヤ」を足すと、「ハレルヤ」または「アレルヤ」となり、「神を讃える」という言葉になります。
よって、これら2つを合わせると「アニ・アレルヤ」、すなわち「私は神を讃える」という言葉になるのです。それが多少訛りつつ、「エニ・アレルヤ」、「エニ・アラヤー」、そして「エン・ヤラヤー」になったと想定するのです。
もう一つ、ヘブライ語を用いた別の解釈があります。「えんやらや」の「やら」を、「いきましょう!」、「進み続けましょう!」を意味するיאללה(yallah、ヤラ) と理解するのです。すると、אני יאללה(aniyallah、アニヤラ) は、「我は進み続ける!」の意味になります。その語尾に「神」を意味する「ヤ」を加えて「アニヤラ・ヤー」とすれば、「我は行きます!神よ!」となり、神の御加護を得ながら前進する強い思いが窺えます。
ヘブライ語で読む「エンヤラヤ」とは、「我は神を讃えます!」、もしくは、「神よ、我は行きます!」という意味に捉えることができます。いずれも元気いっぱいの叫び声となり、祭りの囃子詞にふさわしい意味を兼ね備えています。桃太郎の歌詞全体を振り返るならば、後者の「我は行きます!」という意味に捉えることにより、「勇んで車をえんやらや」の意味合いがより明確になってきます。それは単に力を込めるだけでなく、神に祈りつつ、「神よ!」、「我は進んで行きます!」という情熱に満ちていたのです。
桃太郎の歌詞
桃太郎さん 桃太郎さん
お腰につけた黍団子 一つわたしに下さいなやりましょう やりましょう
これから鬼の征伐について行くならやりましょう行きましょう 行きましょう
あなたについて何処までも家来になって行きましょうそりゃ進め そりゃ進め
一度に攻めて攻めやぶり つぶしてしまえ 鬼が島おもしろい おもしろい
のこらず鬼を攻めふせて 分捕物をえんやらや万々歳 万々歳
お伴の犬や猿雉子は 勇んで車をえんやらや
イエスの弟子達が東方に向かった噂は
神を讃える祭りや伊勢神宮の神木を運ぶ掛け声、あるいは相撲の「はっけよい のこった」などの
掛け声に潜んでいるーとも解釈しうる。
ご説に賛同致します。