出船音頭の囃子詞
函館港を題材として作曲され、民謡大会でも開幕時に頻繁に唄われる「出船音頭」では、「エッサ、エッサ」「ホーイサ」という、誰もが聞き慣れた囃子詞が会場に響き渡ります。また、よく知られた童謡「お猿のかごや」でも「エッサホーイサッサ」と唄われ、その詞は「出船音頭」と共通しています。しかし、これらの詞の意味を日本語として理解することはできません。
なぜ、同じような言葉が、さまざまな民謡や童謡で唄われてきたのでしょうか。しかも、それらは日本語としては明確な意味を持ちません。これらの囃子詞は、一見すると日本語では理解できないものの、ヘブライ語として読むことにより、そこに別の意味が浮かび上がってくるように思われます。
「エッサエッサ」とは「神の救い!」
多くの囃子詞は、ヘブライ語で読むことにより、その詞の意味を理解することができます。「エッサ」も例外ではありません。ヘブライ語にはישע(yesha、イェシャ)という「救い」を意味する言葉があります。この言葉をルーツとして、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教においては、ヨシュア、イエス、イサなどの名前が派生しました。そして、「イェシャ」という語は「神の救い」や「救世主」を意味する言葉にも繋がります。そのため、イエス・キリストの名前の語源とも関連し、古くから重要な言葉として捉えられ、大切に考えられてきたのです。また、「イサ」という名称が、今日でもイスラム圏を中心にイエス・キリストの呼び名として用いられていることも注目に値します。
「イシャ」「イサ」「イェサ」が多少訛って「エサ」「エッサ」となり、「救い」を意味する言葉として囃子詞に用いられるようになったという前提で考えてみましょう。すると、「エッサ」という言葉が囃子詞として多用され、多くの民謡で繰り返し唄われるようになった理由が、浮かび上がってくるようです。「神の救い」を意味する「イサ」「イッサ」が多少訛って「エッサ」になったと仮定するならば、大勢の民が「神の救い!」「偉大なる神!」という思いを込めて、「エッサ」「イッサ」と唄った姿を想像することができます。よって、「エッサ」を繰り返し唄うことは、「神の救い!」をひたすら強調することに結びつきます。「エッサ、エッサ」とは、神に心を向け、神の救いに対してひたすら感謝を捧げるための詞だったのではないでしょうか。
「ホーイサ」の意味とは?
続く「ホーイサ」という詞に、どう結びつくのでしょうか。「ホー」については、二つの可能性が考えられます。一つは、「ホー」という詞が、「お!」「あ!」というヘブライ語の感嘆詞、הו(ho、ホー) に由来するという考え方です。そして「イサ」は前述のとおり「救い主」を意味することから、「ホーイサ」とは、「あー、神の救い!」「あー、イエス・キリスト!」といった意味を持つ可能性が考えられます。大事なポイントは、「イサ」という名称が、イエス・キリストの時代から今日まで、アジア圏の各地において「イエス・キリスト」を意味する詞として使われてきたことです。
もう一つは、「ホー」という詞が、「神を誉め讃える」ことを意味する「ホーシアナ」「ホーシャナ」「ホーザナ」などを語源とし、その冒頭の「ホー」が略称として用いられた可能性です。すると「ホー」という叫びは、単に「あ!」という驚きの詞ではなく、その背景には「ホーシャナ」、すなわち神を誉め讃えるという強い思いが込められていたことになります。このように捉えるなら「ホーイサ」は、「イエス・キリストを誉め讃えよ」という意味に捉えることができます。
いずれにしても、「ホーイサ」とは、信仰の思いを表現した詞だったのでしょう。「ホーイサ」とは、 「あー!イエス・キリスト!」という喜びの叫びであり、また「キリストを誉めよ」という人々の信仰心を言い表していたと考えられます。
囃子詞の「えっさほいさっさ」の意味
なぜ、同じ言葉が多くの民謡や童謡において、古来より唄われてきたのでしょうか。しかも、それらは日本語としては意味が明確ではありません。これらの囃子詞は、一見すると日本語では理解しにくいものでも、ヘブライ語として読んでみると、その本来の意味が浮かび上がってくるように思われます。
「エッサ」「ホーイサ」と唄う出船音頭の囃子詞に酷似する掛け声が、童謡「お猿のかごや」で唄われる「エッサホイ」です。そして、その後には、各地の民謡で頻繁に唄われる「サッサ」という囃子詞が続きます。こうして、「エッサホイサッサ」という掛け声は、いつしか誰もが知る有名な童謡の決まり文句となったのです。
「サッサ」の語源はヘブライ語で「喜ぶ」「喜べ!」を意味するשש(sas、ササ) 、もしくはשוש(sus、スッス) と考えられます。それゆえ、古くから人々がお祭りに集い、踊り唄いながら神を讃える場においては、「ササ」「サッサ」という言葉が叫ばれたのではないでしょうか。こうして、いつしか日本民謡では、「サッサ」という囃子詞が全国各地で頻繁に用いられるようになったと考えられます。
つまり、「エッサ」とは「救い主」、「ホーイサ」は「イエスを誉め讃えよ」、そして「エッサホイ・サッサ」とは「救い主を誉めよ、喜べ!」という信仰告白の詞として理解することができるのです。いずれもヘブライ語で意味を読み取ることができる点に、驚きを隠せません。
出船音頭 北海道民謡
ハアーエーエンヤ エッサ エッサ
出船の朝だよ(アラエンヤコラ)
主の音頭で 船足揃えよ
若いおいらは(ホーイサ ホイサト)
波のり越えて そうだその意気ドントネー
ハアーエーエンヤ ソラ ソラ
朝日が昇るよ(ソラエンヤコラ)
踊る鴎は 出船の友だよ
海の俺等は(ホーイサ ホイサト)
荒波育ち そうだその意気ドントネー
ハアーエーエンヤ エッサ エッサ
朝霧ついてよ(アラエンヤコラ)
船は櫓まかせ 櫓は主まかせよ
行くよ俺等は(ホーイサ ホイサト)
果てない海に そうだその意気ドントネー

納得です。